健康診断で血圧を指摘された方へ — 家庭血圧の測り方と受診の目安

職場や自治体の健康診断で「血圧が高め」「要再検査」と指摘された方から、八丁堀3丁目クリニックにも日々ご相談をいただきます。この記事では、受診前に行っていただきたい「家庭血圧の測定」について、日本高血圧学会のガイドラインに沿って解説します。
なぜ家庭血圧が重要なのか
高血圧の診断で参考にすべきなのは、実は診察室で測る血圧(診察室血圧)だけではありません。日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン 2025』では、「診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は、家庭血圧による診断を優先する」と明記されています。
理由は大きく 2 つあります。
1 つ目は「白衣高血圧」です。医療機関で血圧を測ると緊張で値が上がる方が一定数おられ、診察室血圧だけで判断すると、本来は正常な方が高血圧と診断されるリスクがあります。
2 つ目は「仮面高血圧」です。これは逆に、診察室では正常値なのに、家庭や職場では血圧が高い状態を指します。日本人の高血圧患者の 10〜15% が仮面高血圧とされ、放置すると心血管リスクが高まることが知られています。
つまり、健康診断で血圧を指摘された時点で「診察室での一度だけの測定値」で判断するのではなく、まずご自宅での測定データを集めることが、正確な診断への近道です。
家庭血圧計の選び方
家庭血圧計は、上腕で測るカフ式の血圧計を選んでください。手首式や指式は簡便ですが、測定誤差が大きく、高血圧学会も上腕式を推奨しています。
購入時のチェックポイントは以下の 3 つです。
- 日本高血圧学会または厚生労働省による「医療機器承認」を受けているもの
- カフ(腕に巻く部分)が自分の腕の太さに合うサイズ
- 測定値が自動でメモリに保存されるタイプ(記録が楽になります)
価格帯は 3,000〜10,000 円程度が一般的です。メモリ機能付きで Bluetooth でスマホと連携できるタイプも便利ですが、必須ではありません。紙のノートでも十分記録できます。
正しい測定のタイミング
家庭血圧は「朝と晩、それぞれ 2 回ずつ」測定するのが基本です。
朝の測定
- 起床後 1 時間以内
- 排尿を済ませた後
- 朝食と服薬の前
- 座って 1〜2 分安静にしてから測定
朝の血圧は「早朝高血圧」の発見に重要です。早朝は心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)が最も起こりやすい時間帯であり、この時間帯の血圧管理が最も重要とされています。
晩の測定
- 就寝前
- 入浴・飲酒・喫煙から最低 30 分空けた後
- 座って 1〜2 分安静にしてから測定
共通の注意点
- 1 回測ったら 1〜2 分おいて、同じ条件でもう 1 回測る(合計 2 回)
- 2 回の値の平均を、その時点の血圧として記録する
- 測定値は「都合の悪い値を除外しない」こと — 全て記録するのが原則
どれくらいの期間、記録すればよいか
受診前には最低 5〜7 日分、理想的には 2 週間分の記録をお持ちいただけると、診断の精度が格段に上がります。
曜日・状況(平日か休日か、飲酒後かなど)による変動を見ることで、ご自身の血圧の「平常値」が見えてきます。1 日 2 回 × 14 日 = 28 データあれば、統計的にも信頼できる判断ができます。
受診の目安
家庭血圧で以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに医療機関へのご相談をお勧めします。
- 朝または晩の血圧が 135/85 mmHg 以上が 5 日以上続く
- 収縮期血圧(上の値)が 160 mmHg 以上を一度でも記録
- 頭痛・めまい・胸の違和感を伴う
- 過去 2〜3 年の健康診断で毎回血圧を指摘されている
逆に、家庭血圧がずっと 135/85 mmHg 未満で安定していれば、白衣高血圧の可能性が高く、慌てて治療を始める必要はありません。ただし、年齢や他の生活習慣病の有無によっては、家庭血圧が正常でも 1 回は医療機関での評価を受けることをお勧めします。
受診当日にお持ちいただきたいもの
八丁堀3丁目クリニックで血圧のご相談を受ける際は、以下をお持ちください。
- 健康診断の結果票(過去 2〜3 年分あるとなお良い)
- 家庭血圧の記録(最低 5〜7 日分)
- マイナンバーカード(マイナ保険証)または資格確認書
- 現在服用中のお薬がある場合はお薬手帳
結果票と家庭血圧記録を見ながら、生活習慣・家族歴・他の数値(コレステロール・HbA1c・腎機能など)も含めて総合的に評価し、治療方針をご相談します。
薬を始めるかどうかは、一緒に決めていけること
「血圧が高いと言われたら、すぐ薬を飲むことになるのでは?」というご不安をよく伺いますが、必ずしもそうではありません。
軽度〜中等度の高血圧で、他の心血管リスク(糖尿病・脂質異常症・喫煙・家族歴など)が少ない方は、まず 1〜3 か月の生活習慣改善(減塩・運動・節酒・禁煙)から始めることもあります。家庭血圧を継続して記録しながら、改善が見られれば薬物療法は不要と判断できるケースもあります。
一方、すでに高血圧性の合併症(心肥大・たんぱく尿・網膜症など)がある方や、収縮期血圧が 160 mmHg を超える方は、早期からの薬物療法が推奨されます。
いずれの場合も、治療方針は一方的にお伝えするのではなく、ライフスタイル・仕事・ご家族のことを伺いながら、一緒に決めていきます。オフィスワーカーで忙しい方には、服薬回数の少ない薬の選択や、オンライン診療を組み合わせた通院負担の軽減もご提案しています。
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執筆: 石田 和也(院長)